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be with you [あなたと一緒に] 21-4 [SPEC]

暗闇の真ん中で再び目を閉じた。
あたしは一人また闇に包まれる。

死ぬことに恐れはない。
今では懐かしさすら感じる、あの『闇』に戻るだけだから。

どれ程そこにいて、どれくらいそこを漂っていたのか、
それはもう思い出せないほど遠い昔のことのようであり昨日のことのようにも思える。

そこで見た世界、自分がいない世界。
その世界で生きたいと願った、束の間でいいから、夢でもいいから・・・。
そんな夢を現実にしてくれた瀬文さんには感謝だ。

『さよなら、瀬文さん。そして、ありがとう・・・』

そう独り呟いた直後、銃声がして衝撃の代わりにドサリという音がした。

そして、もう一発銃声が響いた。

何が起こったのか分からなかった。
いや、本当は分かってたのかもしれない。

大きく息を吐き目を開ける。
最初はぼんやりと段々とハッキリとしていく視界が怖かった。

空に顔を向け、大きく息を吸い込むと
どこかで嗅いだことのある懐かしいような血のにおいが鼻をつく。

心の中で、何かが砕け散ってゆく。

襲ってきたのは手足の冷たさと震え、どうしようもない喉の渇き、そして・・・絶望。
じわじわと目のあたりが熱を持ち痛みだす。

目の前の黒い塊に血だまりに沈んでいった石原の姿が重なる。

そして後を追う為に自分に銃を向けた女の声が聞こえたような気がした。

「この人と一緒じゃなければ・・・、そうしなければ生きていけないから
 そこ以外に居場所なんてないのだから」

ああ・・・、ここもあたしにとってはもう『闇』なんだ。

そう思った瞬間、叫んでいた。

「瀬文さーん!」









まずいな……。そう瀬文が感じた時、セカイの銃が当麻に向けられた。

瀬文は僅かに人の気配を感じ、足元に目をやる。
螺旋階段でゴーグルが一瞬光った。

それを確認すると同時に瀬文はセカイと当麻の間へ飛び出す。
セカイが引き鉄を引いた。

直後、「バスッ」と遠くから一発の銃声が響き
セカイの額をまっすぐに貫いた。
更に、もう一発の銃弾がセカイの手にあるデバイスを砕く。

間髪おかず数発の銃弾がセカイの胸めがけて放たれ、セカイの身体が踊るように崩れ落ちる。

「瀬文ー!」

里中は瀬文に駆け寄ると頸動脈に指を当て厳しい顔を少しだけ緩め
瀬文の息があるのを確認して志村を呼ぶ。

「おーい、志村! 瀬文を頼む」

里中に呼ばれた志村が、「先輩ー!」と勢いよく駆けてゆく。

当麻は茫然と座り込んだままだ。

当麻に歩み寄った里中はしゃがみこみ、ロープを外しながらうつむく当麻の顔を覗き込む。

「当麻ちゃん、大丈夫か?」

「里中さん・・・」

今にも零れてしまいそうな程に潤んだ瞳の当麻が顔を上げた。
その二人の前を数人の隊員達によって運ばれていく瀬文。
当麻は瀬文の姿を目で追ったまま

「瀬文さんは?」

「大丈夫だ。
 あいつはそう簡単に死んだりしねーよ。
 大事な相棒を残していったりするようなヤツじゃない」

里中の大きな手が当麻の肩をぽんぽんとたたく。

当麻の瞳から、一滴の涙が落ちた。

程なくして瀬文を乗せた救急車のサイレンの音が遠ざかっていく。

「立てるか?」

「無理みたいっす」

少し照れたように当麻が答える。

「じゃ、しっかり捕まってろ」

里中が当麻を抱き上げ歩き出す。

「あれだな」

「えっ?」

「こんなとこ瀬文に見られたら、俺殺されるかもな?」

里中が人懐っこい目をして悪戯に笑う。

「里中さん・・・」

ふっと当麻が微笑んだ。

「おっ、やっと笑ったな当麻ちゃん」

「あいつはいっつもあんたの心配ばっかりしてたよ。
 まあ、本人には何にも言わないだろうがな。
 瀬文って男はそういうやつだ。
 だから、あいつの目がさめたら今度は思い切り心配してやってくれ」

「そうだ、青池さんは?」

「青池はSIROの連中が無事救出した。
 爆弾も処理したぞ! ま、処理班がだけどな。
 日本の警察なめんなよ。あははっ」

「さあ、病院・・・いや瀬文のとこ行くぞ」

「えっ?・・・はい」

二人を乗せた車は、朝焼けの迫る薄明かりの中を進んで行った。








事件の謎と結末はいかがでしたでしょうか?

やっと決着が着きました。(←なげーよ!)
でも、まだまだ結婚式にはつながりませんけどねぇ。(笑)

里中さんと会うたび当麻のことばっかり話してる瀬文さんとか
番外編で書いてみたら面白いかな?
とか、ゆっくり書く暇もないくせにいらんことばっかり思いつく今日この頃であります。

さて、次は少しは甘くなるんでしょうか?

では、また。





タグ:SPEC 瀬文 当麻
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コメント 2

igara

やだ、素敵~♪
え?これでも十分甘いと思うのは気のせい?(爆)

謹んで、続きをお待ちしてます。

by igara (2014-03-25 10:16) 

とんとん

なははっ。
そうでした、わたしにしては十分甘いかもです。
でも甘いのは里中さんだけだったりして。(笑)

次はもう甘甘です。
でも、それもいつまで続くやら・・・♪~( ´ε`;)ゞ

ちょっと忙しくて更新遅れ気味ですが、
謹んで書かせていただきます。



by とんとん (2014-03-31 23:31) 

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