be with you [あなたと一緒に] 26-1 [SPEC]
「あ、瀬文くん?
もう退院するの? 慌てなくてもいいんじゃない?」
「僕が行ければいいんだけど・・・あっ、そぅお?
それなら、明日は当麻くんに行ってもらうから」
「えっ、今日の夕方? ちょっと早くない?」
「それじゃ、お店の場所は当麻くんに渡しとくから
せめて僕からの退院祝い受けとって帰って。
仲良くね。二人でね。食べてね。これは命令だからね」
電話の向こうで睨みを効かしているであろう瀬文の返事を聞かず野々村は電話を切った。
そこへ吉川と一緒に昼食に出かけていた当麻が戻ってきた。
「当麻く~ん。瀬文くんが今日退院するそうだから迎えに行ってくれる?」
「はっ? もう退院するんすか? 早くね?
それに、めんどくさくないですか?
子供じゃあるまいし・・・てか、おっさんだし。
一人で帰れるっしょ。殺しても死なないっつーの」
「これこれ・・・。そんなこと言わない」
「係長が行けばいいじゃないですかー」
「えっ、僕はちょっと・・・その用事が・・・」
「雅ちゃんすか? デートっすか?」
「ゴホン! あの当麻くん。
瀬文くんのお見舞いに一度も行ってないよね」
「行きましたよ」
「だったら、どーして僕が瀬文くんにて渡したフルーツの籠盛りの籠だけがここにあるのかね?」
行ってないよね? 食べちゃったんだよね。
だから、今日ぐらい行ってもいいんじゃないの? 助けてもらった訳だし」
「そうやで、行ってやれ。そのぐらいしてもバチは当たらんでぇ」
と業を煮やした吉川が二人の会話に割って入った。
「分かりましたよー。行けばいいんでしょ、行けば」
「うんうん。定時前に出ていいからね。じゃあ、瀬文くんによろしく」
観念した様子の当麻に妙にご機嫌な野々村が小さなメモを手渡した。
その少し前、ある決心をした瀬文は海野を脅していた。
「海野。俺のことを『銀の杭でも打ち込まないと死なない』とか何とか言ってたらしいな。
だったら、退院させろ!」
「当麻さんに聞いたんですね」
海野はいつもの如何わしい笑みを浮かべた。
「聞いてねぇ。とにかくすぐに退院させろ!」
「あなたの言うことはいちいちムチャクチャですね。
そうですか・・・。ダメだと言っても無駄でしょうね。
わかりました。その代わり・・・・・」
すっかり諦め顔の海野に退院の許可を得て、
上司である野々村に今日の夕方には退院するという報告とある頼みごとをしていた。
大きく赤い夕陽が幻想的な赤みを帯びて病室の中を照らし始めた頃、
当麻が冬の冴えた空気を張り付けてやってきた。
開けた扉の中に入るでもなく瀬文とは顔も合わせず当麻が口を開いた。
「お勤めご苦労様でした」
「おい、俺は出所する訳じゃねぇぞ!」
仏頂面を張り付けたまま、片眉をピクリと上げた瀬文にいつもの拳が飛んでくるに違いないと当麻が肩をすぼめていると
「わざわざ、来てもらって悪かったな」
と瀬文は驚いたことに素直に礼を言ったのである。
「どうかしちゃったんすか?」
「こんなところで喧嘩していても何も始まらんだろう」
「それはそうですけど・・・」
いつもとは様子の違う瀬文を当麻はどこか寂しく思った。
紙袋だけを片手に病室を出て行こうとする瀬文。
「荷物は?」
怪訝な顔で当麻が尋ねる。
「それなら、美鈴ちゃんが来て片付けていった」
「はぁ~っ? それなら迎えなんていらなかったじゃないですか?」
「そうかもしれん。だが・・・。べ、別にいいだろう。
とにかく行くぞ!」
「お前の隣りにこうやって居ると何だか落ち着くな」
――ふっと洩らした言葉にどことなく気まずい思いで隣を見るとそこには確かに瀬文がいた。
それだけのことなのにあたしは胸の鼓動を鎮める事が出来ない。
満ち足りた大らかな気持ちと光の記憶が当麻を包んだ。
取り敢えず、今回はここまででというか途中ですみません。
続きは早めにUPしますんで。
では、また。
もう退院するの? 慌てなくてもいいんじゃない?」
「僕が行ければいいんだけど・・・あっ、そぅお?
それなら、明日は当麻くんに行ってもらうから」
「えっ、今日の夕方? ちょっと早くない?」
「それじゃ、お店の場所は当麻くんに渡しとくから
せめて僕からの退院祝い受けとって帰って。
仲良くね。二人でね。食べてね。これは命令だからね」
電話の向こうで睨みを効かしているであろう瀬文の返事を聞かず野々村は電話を切った。
そこへ吉川と一緒に昼食に出かけていた当麻が戻ってきた。
「当麻く~ん。瀬文くんが今日退院するそうだから迎えに行ってくれる?」
「はっ? もう退院するんすか? 早くね?
それに、めんどくさくないですか?
子供じゃあるまいし・・・てか、おっさんだし。
一人で帰れるっしょ。殺しても死なないっつーの」
「これこれ・・・。そんなこと言わない」
「係長が行けばいいじゃないですかー」
「えっ、僕はちょっと・・・その用事が・・・」
「雅ちゃんすか? デートっすか?」
「ゴホン! あの当麻くん。
瀬文くんのお見舞いに一度も行ってないよね」
「行きましたよ」
「だったら、どーして僕が瀬文くんにて渡したフルーツの籠盛りの籠だけがここにあるのかね?」
行ってないよね? 食べちゃったんだよね。
だから、今日ぐらい行ってもいいんじゃないの? 助けてもらった訳だし」
「そうやで、行ってやれ。そのぐらいしてもバチは当たらんでぇ」
と業を煮やした吉川が二人の会話に割って入った。
「分かりましたよー。行けばいいんでしょ、行けば」
「うんうん。定時前に出ていいからね。じゃあ、瀬文くんによろしく」
観念した様子の当麻に妙にご機嫌な野々村が小さなメモを手渡した。
その少し前、ある決心をした瀬文は海野を脅していた。
「海野。俺のことを『銀の杭でも打ち込まないと死なない』とか何とか言ってたらしいな。
だったら、退院させろ!」
「当麻さんに聞いたんですね」
海野はいつもの如何わしい笑みを浮かべた。
「聞いてねぇ。とにかくすぐに退院させろ!」
「あなたの言うことはいちいちムチャクチャですね。
そうですか・・・。ダメだと言っても無駄でしょうね。
わかりました。その代わり・・・・・」
すっかり諦め顔の海野に退院の許可を得て、
上司である野々村に今日の夕方には退院するという報告とある頼みごとをしていた。
大きく赤い夕陽が幻想的な赤みを帯びて病室の中を照らし始めた頃、
当麻が冬の冴えた空気を張り付けてやってきた。
開けた扉の中に入るでもなく瀬文とは顔も合わせず当麻が口を開いた。
「お勤めご苦労様でした」
「おい、俺は出所する訳じゃねぇぞ!」
仏頂面を張り付けたまま、片眉をピクリと上げた瀬文にいつもの拳が飛んでくるに違いないと当麻が肩をすぼめていると
「わざわざ、来てもらって悪かったな」
と瀬文は驚いたことに素直に礼を言ったのである。
「どうかしちゃったんすか?」
「こんなところで喧嘩していても何も始まらんだろう」
「それはそうですけど・・・」
いつもとは様子の違う瀬文を当麻はどこか寂しく思った。
紙袋だけを片手に病室を出て行こうとする瀬文。
「荷物は?」
怪訝な顔で当麻が尋ねる。
「それなら、美鈴ちゃんが来て片付けていった」
「はぁ~っ? それなら迎えなんていらなかったじゃないですか?」
「そうかもしれん。だが・・・。べ、別にいいだろう。
とにかく行くぞ!」
「お前の隣りにこうやって居ると何だか落ち着くな」
――ふっと洩らした言葉にどことなく気まずい思いで隣を見るとそこには確かに瀬文がいた。
それだけのことなのにあたしは胸の鼓動を鎮める事が出来ない。
満ち足りた大らかな気持ちと光の記憶が当麻を包んだ。
取り敢えず、今回はここまででというか途中ですみません。
続きは早めにUPしますんで。
では、また。
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