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be with you [あなたと一緒に] 27-1 [SPEC]

ん? じょりじょり・・・。
なんだこの感触?

愛する平坂照雄先生の抱き枕がいつものようにふわふわしない。
堅い、あったかい。その上、微妙に動いてる。
息をしている、心臓の音がする。しかも、手がはえてる?
そんなはずはない。
気のせい、気のせい?

でも、この布団の感触、
自分のとも、未詳のとも違う気が・・・。
なら、ここはどこ?

とりあえず、この抱き枕の正体を確かめねば。

そっと、撫でてみよう。
やっぱりじょりじょりする。
ん? この上下する出っ張ったものは何?
むぎゅぅ。

「うっ!」

先生がしゃべった?
こっちを向いた?

なんだ、この状況?
イヤな、予感しかしない。

しょうがない、目を開けてみるか。

「せっ、せっ、瀬文さん?」

どう見ても自分から巻き付けた手と脚を放し慌てて離れる当麻。

どうして?
えーっと、昨夜は・・・。

「当麻、起きたのか?」

「起きたのかじゃないですよ!」

何で瀬文が隣に?
まさか?

当麻が勢いよく、布団を蹴飛ばした。

素早く起き上がり、ベッドの上に胡坐をかいて座る瀬文と
慌てて飛び起き、じたばたと動きまわる当麻。

ほっ、上着以外は全部着てる。
でも、純情可憐な乙女を布団に連れ込むなんてー。
この変態。ロリコン。エロハゲオヤジ!

「うるせぇ! 寒い!
 俺は変態でもロリコンでもハゲでもねぇ!」

オイッ、エロとオヤジは否定しねぇのかよ!
なんて突っ込んでる場合じゃないよな、あたし。
てか、何で考えてることバレたんだ?

「お前、考えてること全部声に出てるぞ」

「えっ?」

「そんなことより、あたし達って・・・。
 いえ、もしかして瀬文さんあたしに何かしました?」

「するかよ!」

「ホントに?」

「してねぇと言ったらしてねぇ!」

瀬文は避難するように眉をひそめてから溜め息を吐いた。

「それにしても、お前って・・・」

「んだと! 喧嘩売ろうてか?」

「まだ、何も言ってねえだだろ、殴るな。俺は退院したばかりだ傷が開く」

「もしかして何も覚えてないのか?」

「覚えてませんよ」

「なら、ここで俺とベッドで寝てる理由を聞きたいか?」

当麻の優秀過ぎる脳は「聞かない方がいい」という危険信号を発している。

「聞きたくないっす」

「そうか。じゃあ、言わないでおいてやる。
 だから、さっさと起きて仕事に行け!」

「えー、なんか上手くごまかされたような・・・、
 それに頭痛いし、休みたいっす」

「飲みすぎだ、知らん! とっとと未詳へ行け」

「瀬文さんは?」

「俺は療養中だ」

「自分ばっかずるいぃ~」

「ずるくねぇ!」

「でもー、スーツよれよれだし」

「それはいつものことだろ!」

「自分はちゃっかりと着替えてるじゃないですかー」

「当たり前だ、ここは俺の家だ。
 それとも何だ、俺に着替えさせて欲しかったのか?」

「そ、それは・・・」

瀬文の目があたしの顔だけをしっかりと見据えていることに気づいて
急に恥ずかしくなり、うつむいたまま反論することもできなかった。

頭上から振りおろされた大きな手に思わず身構えたが、
それは優しくあたしの髪を梳いた後、軽くポンと弾いて遠ざかっていった。

ハンガーに掛けられていた上着とコートを手に戻ってきた瀬文。
その顔に浮かぶ微笑みに耐えきれず仕事に行くとだけ告げる。

「じゃあな。係長によろしく言って・・・いや、待て。何も言うな。
 当麻、分かってるとは思うが余計なことは言うなよ。
 特に吉川には言うんじゃねぇぞ!」

玄関先でキャリーを手渡しながら瀬文が言った。
言うだけ言って、睨みつけるようなあたしの目を見て更に何かを言おうとしてさり気なく視線を逸らしたのは何故だ。

玄関のドアが閉じてしまうと薄かった空気がなんだか濃くなったような気がして、
大きく息を吸いこむと流れ込んだ酸素のせいかの頭の中の霧が晴れてゆく。

「そうか、あれは夢じゃなかったんだ」

小さく呟きながら、当麻は未詳へと歩き出した。


タグ:SPEC 当麻 瀬文
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