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「Montage」 第三話 雨の記憶 [Montage]

雨音がしていた。
あたりはやや薄暗く、誰もいないはずのベッドの傍らにはまだ温もりが残っている。

「まさか・・・チセ・・・」

そんな想いをかき消しながら、天井を見上げていた耳に見知らぬ女の声がした。

「帰るわ」

「誰?」
驚きながら、俺は起き上がった。

「酷い人ね、それはないでしょ」
「ま、いいわ。じゃあね」

見知らぬ女はそれだけを告げると軽く手を振り帰っていった。

扉の閉まる音。
虚しさだけが残される。

見覚えのない女・・・。
記憶のない時間・・・。

別にこれが初めてという訳じゃない。

窓の外はさらに激しい雨が降り続く。
雨音が俺の心をかき乱す。

俺には子供の頃のことはかすかな記憶しかない。
きっといい思い出がなかったに違いない。
そうやって、いつも自分で自分の記憶に蓋をする。

チセと出会ったのも、別れたのも運命なのだと人は言う。
そうじゃない。

運命などどいうものは偶然という名のパズルで
過去を受け入れられない弱い人間が造り出した幻想にしか過ぎない。

運命とは 過去にしか存在しないものだ。
過去にしか存在しないものなんて何の意味も持たない。

未来さえも、いつかは過去になる。
だから、何を求めてどう生きていくかなんて考えたこともない。

チセと出会ったのも、別れたのも過去の記憶の一部に過ぎない。
それでも、俺はこの時、彼女のことをどこかに置き忘れたパズルのピースのように感じていた。


あの日、仕事を終え、家路を急いでいると
朝の日差しがまるで嘘のように激しい雨が降り出した。

もう、すっかり日も落ちているというのに
部屋には灯りがない。
「疲れて寝てしまったのだろう」
そう思い、玄関の扉を開ける。

「ただいま」いつものように口にした。
返事はない。

チセの姿を求めて歩き回った。
だが、リビングのソファにも寝室のベッドにも姿はなかった。

俺は、静けさの中、立ちすくみ
朝、「いってらっしゃい」と自分を見送ったチセを思い出していた。

それは、どこか寂しげな顔だった。
バタンと閉まる扉の音が無言の「さよなら」を告げていたのか・・・。

いつかはこんな日が来ることは分かっていた。

俺は名前と年齢意外はチセのことを何も知らない。
いや、それすらも本当なのかさえ分からないのだ。

互いに自分のことを話さなかったし、聞こうとはしなかった。

彼女が何者でどうやって生きてきたのか、そんなことどうだってよかった。
ただチセが側にいてくれればそれでよかったのだ。

例えそれが、誰もいなくなった秋の砂浜に取り残された砂の城なのだとしても
手を伸ばせば崩れてしまうほど儚い夢だとしても・・・。

けれど、チセがいなくなったとわかっても俺は彼女を探さなかった。
いや探せなかったのだ。
俺の中の何かが探してはいけないと教えていた。

それは彼女には普通の女性とどこか違う、
そうまるでチセという女性を演じているかのような印象を受けたからかもしれない。
そして、彼女が俺をみつめる時の
まるでこの場所に存在するはずのないものを見ているような微かな違和感のせいかもしれない。

1年という時間は何かを忘れるには十分すぎる。
なのにチセのことだけは何ひとつ忘れられずにいる。
どうしてこんなにも求めるんだろう?

「逢いたい・・・」

本当はもう一度、あの優しい声を聞きたい。
この手で触れたい。
抱き上げて、その重さを感じたい。
どうすることもできない衝動がこみ上げてくる。
母を求める子供のように、執着している自分がいる・・・。

何故だ?
全ては記憶の奥底に押し込めてきたはずなのに。

雨の雫が落ちてくる音を聞いていると、感覚が麻痺していくような気がする。
吸い込まれてしまいそうで、とても不安になる。

フォトスタンドには夏の風景。
どこまでも高くどこまでも青い空、どこまでも続く水平線。
そしてどこまでもこんな幸せが続くと信じた瞬間の二人の姿があった。

チセ、おまえは何も言ってくれない。
もう何も見てくれない。
何も聞いてくれない。

フォトスタンドを手にし、窓のそとを見つめる煌の耳には
雨音がやがて波の音に変り、さざ波の記憶が蘇る。

緩やかな波がキラキラを水面を輝かせ
心地よい風が頬をなでる。

煌の名を呼びながらはしゃぐチセの声。
長い髪がいたづらな風になびき、時折覗かせるうなじが白く眩しい。

砂浜を水に足を浸して歩くのがとても心地いい。
振り返ればチセがいた。

緩やかに白く打ち寄せる波がキラキラと輝く。
太陽に身をまかせるように遠く空を見上げる。

「おいで・・・」
手を振るとそれに答えてサンダルを脱ぎ捨てたチセがこちらへ走ってくる。

水をかけかけ合う二人は、まるで幼い子供のように無邪気だった。
それは曇りのない笑顔。
ただ言葉もなく微笑みあう、それだけで幸せだった。

気がつけば、フォトスタンドを抱きしめていた。
涙が出ていた。それだけが分かった。
心がどこかに行ってしまったみたいに、ただ目から涙が溢れていた。

手の中にあった温もりが淋しそうに今でもおまえのことを探してる。
俺は自分を抱きしめた。
あの穏やかな海のように心が落ち着いてゆくのを待った。

だが、どんな言葉を並べても言葉の無意味さを語るかのように
俺の心は乱されたままだった。

いつものように記憶を捨てさって、
笑う事も、泣く事もない、感情というものを意識すらしない日常へは帰れないのか。

彼女が残していったものは、少しの洋服と好きだった甘い香りのキャンドルと
そして小さなカバン。

そのカバンを開ければ何かが分かるかもしれない。
けれど俺は今迄そうする勇気がなかった。
そこに触れようとする自分の指が
まるで「触れてはいけない」そう教えているようだった。

今さら、彼女のことを知って何になる?
けれど今日は雨音のせいか封印してしまいたい過去の記憶と真実を知りたい気持ちを妙に葛藤させる。

やがて、心が静かに封印を解いた。
気がつけばチセのカバンを開けていた。

するりと何かが落ちた。
慌てて拾いあげる。
ブルーの花柄のスケジュール帳のようなものだった。

やや震える手でページをめくる。
予定の書き込まれていない日付がただ続いているだけだった。
それでも何らかの手がかりを得ようとページをめくり続けた。

俺の手が一瞬止まった。
数枚の白紙のページの後に日記のような文章がつづられていたのだ。

そして、俺はチセの思いに何一つ気づいてはいなかったこと
自分が彼女に対して感じていた違和感の正体をも知ることになる。

----------------------------------------------------------------------
後書きは後で書きます。←オヤジギャグ槐!!
(ほんと、明日書きます。それとヘンなこと書いてたらこそっと直すかも?)

とりあえず、ねむいっす。
Zzz…(*´(00)`)。o○
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後書きを書くような内容でもないよう。←オヤジギャグ再び槐!!
あんまりふざけてるとしゃぶしゃぶにされてしまうので、このへんにしてっと。

浜辺でのシーン、もっと綺麗に書きたい気持ちもあったんですけど
ちょっとした都合で・・・えへへっ。←笑ってごまかす

それに、このお話決してラブストーリーではないんです。

仕事遅いわ、話はひっぱるわ、
時間軸が分かりづらいわ、文章は意味不明だわ
ほんとにすみませーん。 ←一応、自覚はあるらしい

煌はいったい何を知るんでしょうね? 
えっ? そんなの興味ないって??

。゚(゚´(00)`゚)゚。ぶひぃーん。


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ヒヨッコ

一番乗りかな?
ぶちょー様、お疲れさまです!
いつも、こっそっと見にこさせてもらっています。
楽しみにしていますので無理の無い範囲で
お願いしますね!
by ヒヨッコ (2007-11-13 02:50) 

ココ

おはようござい…、ございます~。

相変わらずお綺麗ですこと~。キラキラ~。
文章だけじゃなく、今回は脳内映像も輝いてますわ~。
海辺のシーン、なんか切なくなっちゃいますね(まだ話がわからんなりに)。

>「おいで・・・」

やーん、わたくしも言われたいです。…そして、沈められるのね。

時間軸、はーい、解り辛いです~。
早く絡んだ糸がほぐれ、すべての景色が目の前に広がる日をお待ちしておりますわ~(おほほっ、書いちゃったものだから余裕の発言?でも、ちょっと淋しいきょうこのごろでございます)。

>『煌』(コウ)より素敵な人出てくるもんねぇ~。(内緒!)

えっ、そうですの?続き、たーのしみ~~~。
by ココ (2007-11-13 06:30) 

もののあはれ

はじめまして。
もののあはれです。
この、「Montage」、全体がまさにモンタージュでいろんなシーンの断片なので、妄想を膨らましつつ、画面のイメージとつながりをリアルにするには色々と策が必要で、手前のブログでもアップしてみましたが、難しかったですね。
蛇足がかなりあったかも知れません。

続き楽しみにしています。

がんばってくださいね。
by もののあはれ (2007-11-16 09:37) 

あね

やっと、こちらに来ることが出来ました
遅くなってごめんね~←昭和の歌はやめなさいってば(汗)

煌とチセのラブラブショー(結局、昭和)を堪能させていただきました。
これからの展開で、私を違う世界に誘ってくれる予感がして
胸がときめいてまいりますわ。

煌の心の葛藤、どんな感じなのでしょ?
苦悩する煌でしょか?うー、わくわく←やっぱりドS

ぶちょーの流れるような文章に引き込まれてます。

無理せずに、お書きになって下さいね。

>抱き上げて、その重さを感じたい。
↑ここで「そうか、重さを感じたいのね」
・・・以蔵さんの影がよぎった私をお許し下さーい(^_^;)
by あね (2007-11-16 13:47) 

ごまきち

ぶちょ~~~
お元気そぅでなによりでし(←何いってるんだか?)
凹み犬は、本日午後から暇しておりましたので、ひっさびさぁ~にこちらへお邪魔いたしましたワンッ⊂((〃/⊥\〃))⊃ウキャ♪
え?
お前は暇でもワシは(←不破じぃ槐?)忙しいわって?
でへへへへ(  ̄(エ) ̄;A 

煌さまよりも、かっちょいーしとって誰っっ!?
一体誰が出てくんのーーーーーっっっっっっ!!!???
(↑こっち来ても言ってるし(  ̄(エ) ̄;A )


ふぅーっ33
そぃにしても・・・
やはり、ぶちょの描かれるシーンや心情の描写は本当に美しくて切ないですわ(〃д〃)
儚い濃い・・・じゃないわ、恋の、胸を締め付けるよぅなきゅ~んっとした感じがとってもすっきー・・です⊂((〃/⊥\〃))⊃ウキャ♪
(↑遠い目)

煌が知った秘密・・・気になりますワンッ(o>ェ<)
早く続きを槐てちょっっ!!(←ドS犬)
by ごまきち (2007-11-16 15:14) 

とんとん

>ヒヨッコさま

そんなこそっととおっしゃらず堂々とどーぞ。

仕事が忙しいのでなかなか更新できませんが、
今年中には書き終わりたいと思っています。←ホントかよ!

書くのは書けるのですが、まとめるのが遅くってすみません。
by とんとん (2007-11-19 23:01) 

とんとん

>ココさま

ずっと、脳内変換で美化してくださいませぇ~。
なんせ、たいした話じゃないもので。なははっ。

>やーん、わたくしも言われたいです。…そして、沈められるのね。

ぎゃははーーー!!!
イカは沈まんだろうて・・・。
っていうか、きっと煌はやさしいから沈めないんでは?
どちらかと言うと、イカさまが煌にからみついてそう(ほほほっ)

ココさま、もう書き終わったのですよね。
では、番外編とか、スピンドルとかどうでそ?
by とんとん (2007-11-19 23:06) 

とんとん

>もののあはれさま

「Montage」を書かれたのですね。
画面とちゃんと繋がったものを書くのは本当に難しいと思います。

このお話は、あくまでイメージだけで、全く映像のままという訳ではありません。
どちらかと言うと、こんなのを映像で見たいという感じです。

今は、影響されてしまいそうなのでどなたの作品もあえて読まないことにしていますが、
書き終わった後、機会があれば読ませていただきますね。
by とんとん (2007-11-19 23:16) 

とんとん

>あねさま

何か、あねさまが登場されると画面がセピアになりますわー。
ここ、三丁目でした槐?

>これからの展開で、私を違う世界に誘ってくれる予感がして
胸がときめいてまいりますわ。

既に違う世界(昭和)に誘われてまーす(笑)
し・か・も・・・

>ここで「そうか、重さを感じたいのね」
・・・以蔵さんの影がよぎった私をお許し下さーい(^_^;)

ぎゃはははーーー!!!
煌に石を抱かせてどうするんです槐?
でも、ちょっと見て見隊だったりして・・・←同じくドS
ついでに、海にも逆さで浸けて見隊 ←オイ!!
by とんとん (2007-11-19 23:22) 

とんとん

>ゾンビ犬へ

生きてた槐? ←これ聞くのって関西人の定番らしい ←ここは中部

>お前は暇でもワシは(←不破じぃ槐?)忙しいわって?

その通りじゃ!(ステッキ、バシバシ)

>煌さまよりも、かっちょいーしとって誰っっ!?
一体誰が出てくんのーーーーーっっっっっっ!!!???

自分でお読み!!(ステッキ、バシバシ2)

>早く続きを槐てちょっっ!!(←ドS犬)

書いたよ! 書いてるよ!!(ステッキ、バシバシ3)

あ、自分で土にもぐっていきおったわい。←やっぱり不破じい
by とんとん (2007-11-19 23:41) 

ごまきち

ゴソゴソ・・・スッポン!!(←穴の中から出て来たらしぃ)

ほぉ~~33
やっと不破じぃが去って行ったわ(  ̄(エ) ̄;A 
何だか最近、穴に埋まってる方が落ち着いてたりして・・・
万歳犬改め、ゾンビ犬でいこうかしら?
万歳妄想エロゾンビ犬のごまきちでやんすぅ~~(● ̄(エ) ̄●)ノ
・・・って、長っっ!!
へへへ♪
だぁ~れもいない内に、久々にごまーキングしといたろかぁ~~?
むふっ♪♪♪⊂((〃/⊥\〃))⊃ウキャ♪
by ごまきち (2007-11-20 18:07) 

ひろみ

ご無沙汰致しております・・・・・。

昼ドラが終わりかけの頃から モーレツに仕事が忙しくなり 
まともに帰宅出来ない状態で が続いておりました・・・。

まず・・・ 大変遅くなってしまいましたが
昼ドラ放映中の時期は 本当に本当に沢山 
愉しませていただきまして 有難う御座いました。
こちらのブログに出会えていなかったら
途中で 観る事を止めてしまっていたと思います(苦笑)

そして・・・Montageのストーリー 素敵過ぎますっ!!!
ロマンティック過ぎですっ!!!
「ただチセが側にいてくれればそれでよかったのだ。」
こういうセリフ とぉ~っても弱いです・・・。

完全に 浦島花子状態になっておりますが
これからも 時々お邪魔させて下さいませ~。
by ひろみ (2007-11-23 16:31) 

とんとん

>ごまちん

>万歳妄想エロゾンビ犬のごまきちでやんすぅ~~(● ̄(エ) ̄●)ノ

ドMが抜けてますからっ!
マーケットが抜けてますからっ!

万歳妄想ドMマーケットエロゾンビ犬・・・って、長っっ!!

ごりゃー!!
何を勝手にゴマーキングしとるんじゃー(←不破じいが戻ってきたらしい)
by とんとん (2007-11-25 20:22) 

とんとん

>ひろみさま

お久しぶりでございます。
仕事、忙しそうですね。

わたしも、9月からは仕事が忙しくて
金翼、1日遅れになりながらなんとか更新作業をしていました。
みなさんにエネルギーを貰ってたから続けられたんだと思います。

Montage・・・なかなか書けずにおります。(すみません)
一気に書けばいいのですが、それができなくて
自分の書いてるものがそれこそ、Montageのように断片的で
まとめるのが大変なことになっています(笑い)
こんなつたない物語でも楽しんでいただけたなら嬉しいですぅ。

いつでもお待ちしておりますのでまたお越しくださいませ。
by とんとん (2007-11-26 00:18) 

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