be with you [あなたと一緒に] 15 [SPEC]
かれこれ2時間は経ったろうか、
自分の席で腕を組んだまま、瞑想するかのようにじっとしていた瀬文がうっすらと目を開ける。
時計をちらりと見て席を立ち、二人分の珈琲を淹れると、
その一つを当麻の机にトンと置く。
「飲むか?」
「あざーっす」
「少し休憩しろ」
「そうっすね」
そう言いながら首と肩をゴキゴキと回した後、
いつものようにたっぷりと珈琲にはちみつを注ぐ。
「肩でも揉むか?」
モニターを見たまま答える当麻に声をかける。
「いいですよー。気持ち悪っ! 地味にセクハラっすか?」
「黙れブス!」
眠気覚ましとばかり、デカい声を一発おみまいする。
「で、どうだ?」
「いろいろ分かってはきたんですけどねー、
自殺した殺人犯たちに関しては、もう少し情報が欲しいってところです」
「なぁ、当麻。ちょっといいか...」
再びモニターに目を落としかけた当麻に言いにくそうに話を始める。
「なーんすか?」
「志村のことだが...。お前、あいつと結婚するのか?」
「それなら、あいつを幸せにしてやってくれ。
もし泣かすようなことがあったら、俺が許さん!」
「あのー、瀬文さん?
それって、男に言う台詞ですよねー」
「な~んか、勘違いして一人で盛り上がってるところ悪いんすけど
あたしは、誰とも結婚なんてする気ありませんよ」
「じゃあ、なぜ志村と付き合ってる?」
「別に付き合ってませんよ。
ちょっとだけ、普通の女の子みたいな気分を楽しんだりしたのも事実ですけど
ただ、時々一緒にお茶したり食事したりしてるだけです。
誘われるんでありがたく御馳走になってるだけです」
「それを一般的には付き合ってるって言うんじゃないのか?」
「そうっすか?」
「瀬文さんだって、たま~に、まれにだけどCBCで奢ってくれるじゃないですか。
あれって、ひょってしてデートなんです?」
「あれは仕方なくだ。断じてデートなんかじゃねぇ!」
「そうですよね。そういうことです」
「大体、恋なんてのは、脳に分泌される化学物質のせいで、
ドキドキするのは、アドレナリンの出過ぎが原因だし、
気分が高まったり、めちゃめちゃ嬉しかったりするのはドーパミンの仕業、
気になる人のことが頭から離れないのは、セロトニンが足りないだけ。
それだけのことです」
「なんだそれは?」
「志村さんていい人ですよね。
なのに青池さんのこと聞き出すようなことをしたのは自分でもどうかと思います。
だから、こんなあたしなんか相手にしないで幸せになって欲しいと思ってます。
そのことはちゃんと伝えました」
――「ごめんなさい。どうしても隣にいたい人がいるから...。
二人の人生の先が重ならないことは分かっているけど、
それでも共に居られる時間を、ただ隣にいて前を向いていたい。
だから誰とも結婚なんてする気はありません」
「お前だって、一応は若い女だ。
好きな男と結婚して家庭を持つとか、そういう普通の幸せ欲しくないのか?」
「じゃあ、瀬文さんは、何でその年で独身なんですか?
モテないんですか? そうじゃないですよねぇ。
自分こそ青池さんと結婚でも何でもして幸せになればいいじゃないですか!」
「俺は刑事だ。いつ死ぬかわからん」
「あたしだって刑事だよ!」
当麻は椅子から立ち上がって、瀬文を睨みつけた。
その時、瀬文の携帯が着信を告げ、それを受けた瀬文の様子が慌てたものに変わる。
「瀬文さん?」
「宮野からだ。里子が姿を消した」
「青池さんが?」
里子と連絡が取れなくなったのはこれで2回目だ。
まさか、今度こそ...。
慌てて走って出て行こうとした瀬文を当麻が止めた。
「瀬文さん、待って下さい。
今、ここで瀬文さんがむやみに動いたらダメです。
心配なのは分かりますけど、
宮野から電話があったということは既にSIROが探している筈ですから」
「しかし・・・」
「瀬文、冷静になれっつってんだよ!」
振りあげた当麻の手を瀬文が掴んだ。
「なにすんだよ! 放せよ!
あんたのこと心配してんのは青池さんだけじゃねーんだよ!
これだから、バカは嫌いなんだよ!」
当麻は湧きあがってきそうな何かを、必死で押しとどめた。
瀬文は手繰るように僅かに潤んだ当麻の眼の奥を見つめようとしていた。
ただ、間近で、確かな光を放つ美しいそれを、飽きもせず眺めたいと
僅かに震えるその身体をこの手で抱きしめたいと思ったが
必死にその自覚に背を向けて平静を装った。
「あたし分かってますよ。
瀬文さんがそんな風に遠い目をしてる時、あたしを見ながら他の誰かを思ってるんだってこと。
(一体、その心の中には誰がいるんですか?)」
当麻の言葉が俺の神経をどこかでふわりと撫でたのかもしれない。
堪らなくなって、心の中でその細い身体を抱きしめた。
当麻の耳に瀬文の噛み殺した嗚咽が聞こえてくる。
「瀬文さんは、ホント泣き虫っすな」
当麻の手が幼い子をあやすように瀬文の背中をそっと撫でた。
「お前の言う通りだ。すまない。俺は卑怯な男だ。
だから、決してお前が女として残念だとかそういうことではない」
それは絞り出すように小さな声だった。
「もういいですから! 謝らないで下さい。
そんな風に謝られると...なんか惨めな気分になりますって...」
「とにかく今日は大人しくしてて下さい」
さすがの瀬文も己の情けなさに呆れて思わず溜息をつき、小さく首を縦に振った。
せっかくいい雰囲気になったのに、瀬文さん、あんたが残念だよ。(爆)
瀬文さんて、ルックスも性格も悪くないけどモテそうな気がしなくて
私的イメージは「残念な男」なんですよね。
合コンでも「命捨てます」ってやっちゃうような人(里中さん談)なんですもん。
バレンタインにも美鈴ちゃん以外からチョコ貰ってそうな感じがしない。
つーか、チョコ持ってる瀬文さんが想像できない。
実は大量のチョコ貰ってたんだろうか??
謎説きと言いながら、今回は事件の謎についは進展してません。(-_-;)
それでも、志村さんのことについては一応、解決したのかな?
志村さん、いくら「へたれ」だつったって、一応SITの隊員なんだし、
守ってくれるだろうし、優しそうだし、背も高いし、結構いい男だし、
幸せになれそうですけど、物足りないだろうな、当麻にはね。
志村さんが可愛そう。当麻、酷い女だなぁ。(笑)
では、また。
自分の席で腕を組んだまま、瞑想するかのようにじっとしていた瀬文がうっすらと目を開ける。
時計をちらりと見て席を立ち、二人分の珈琲を淹れると、
その一つを当麻の机にトンと置く。
「飲むか?」
「あざーっす」
「少し休憩しろ」
「そうっすね」
そう言いながら首と肩をゴキゴキと回した後、
いつものようにたっぷりと珈琲にはちみつを注ぐ。
「肩でも揉むか?」
モニターを見たまま答える当麻に声をかける。
「いいですよー。気持ち悪っ! 地味にセクハラっすか?」
「黙れブス!」
眠気覚ましとばかり、デカい声を一発おみまいする。
「で、どうだ?」
「いろいろ分かってはきたんですけどねー、
自殺した殺人犯たちに関しては、もう少し情報が欲しいってところです」
「なぁ、当麻。ちょっといいか...」
再びモニターに目を落としかけた当麻に言いにくそうに話を始める。
「なーんすか?」
「志村のことだが...。お前、あいつと結婚するのか?」
「それなら、あいつを幸せにしてやってくれ。
もし泣かすようなことがあったら、俺が許さん!」
「あのー、瀬文さん?
それって、男に言う台詞ですよねー」
「な~んか、勘違いして一人で盛り上がってるところ悪いんすけど
あたしは、誰とも結婚なんてする気ありませんよ」
「じゃあ、なぜ志村と付き合ってる?」
「別に付き合ってませんよ。
ちょっとだけ、普通の女の子みたいな気分を楽しんだりしたのも事実ですけど
ただ、時々一緒にお茶したり食事したりしてるだけです。
誘われるんでありがたく御馳走になってるだけです」
「それを一般的には付き合ってるって言うんじゃないのか?」
「そうっすか?」
「瀬文さんだって、たま~に、まれにだけどCBCで奢ってくれるじゃないですか。
あれって、ひょってしてデートなんです?」
「あれは仕方なくだ。断じてデートなんかじゃねぇ!」
「そうですよね。そういうことです」
「大体、恋なんてのは、脳に分泌される化学物質のせいで、
ドキドキするのは、アドレナリンの出過ぎが原因だし、
気分が高まったり、めちゃめちゃ嬉しかったりするのはドーパミンの仕業、
気になる人のことが頭から離れないのは、セロトニンが足りないだけ。
それだけのことです」
「なんだそれは?」
「志村さんていい人ですよね。
なのに青池さんのこと聞き出すようなことをしたのは自分でもどうかと思います。
だから、こんなあたしなんか相手にしないで幸せになって欲しいと思ってます。
そのことはちゃんと伝えました」
――「ごめんなさい。どうしても隣にいたい人がいるから...。
二人の人生の先が重ならないことは分かっているけど、
それでも共に居られる時間を、ただ隣にいて前を向いていたい。
だから誰とも結婚なんてする気はありません」
「お前だって、一応は若い女だ。
好きな男と結婚して家庭を持つとか、そういう普通の幸せ欲しくないのか?」
「じゃあ、瀬文さんは、何でその年で独身なんですか?
モテないんですか? そうじゃないですよねぇ。
自分こそ青池さんと結婚でも何でもして幸せになればいいじゃないですか!」
「俺は刑事だ。いつ死ぬかわからん」
「あたしだって刑事だよ!」
当麻は椅子から立ち上がって、瀬文を睨みつけた。
その時、瀬文の携帯が着信を告げ、それを受けた瀬文の様子が慌てたものに変わる。
「瀬文さん?」
「宮野からだ。里子が姿を消した」
「青池さんが?」
里子と連絡が取れなくなったのはこれで2回目だ。
まさか、今度こそ...。
慌てて走って出て行こうとした瀬文を当麻が止めた。
「瀬文さん、待って下さい。
今、ここで瀬文さんがむやみに動いたらダメです。
心配なのは分かりますけど、
宮野から電話があったということは既にSIROが探している筈ですから」
「しかし・・・」
「瀬文、冷静になれっつってんだよ!」
振りあげた当麻の手を瀬文が掴んだ。
「なにすんだよ! 放せよ!
あんたのこと心配してんのは青池さんだけじゃねーんだよ!
これだから、バカは嫌いなんだよ!」
当麻は湧きあがってきそうな何かを、必死で押しとどめた。
瀬文は手繰るように僅かに潤んだ当麻の眼の奥を見つめようとしていた。
ただ、間近で、確かな光を放つ美しいそれを、飽きもせず眺めたいと
僅かに震えるその身体をこの手で抱きしめたいと思ったが
必死にその自覚に背を向けて平静を装った。
「あたし分かってますよ。
瀬文さんがそんな風に遠い目をしてる時、あたしを見ながら他の誰かを思ってるんだってこと。
(一体、その心の中には誰がいるんですか?)」
当麻の言葉が俺の神経をどこかでふわりと撫でたのかもしれない。
堪らなくなって、心の中でその細い身体を抱きしめた。
当麻の耳に瀬文の噛み殺した嗚咽が聞こえてくる。
「瀬文さんは、ホント泣き虫っすな」
当麻の手が幼い子をあやすように瀬文の背中をそっと撫でた。
「お前の言う通りだ。すまない。俺は卑怯な男だ。
だから、決してお前が女として残念だとかそういうことではない」
それは絞り出すように小さな声だった。
「もういいですから! 謝らないで下さい。
そんな風に謝られると...なんか惨めな気分になりますって...」
「とにかく今日は大人しくしてて下さい」
さすがの瀬文も己の情けなさに呆れて思わず溜息をつき、小さく首を縦に振った。
せっかくいい雰囲気になったのに、瀬文さん、あんたが残念だよ。(爆)
瀬文さんて、ルックスも性格も悪くないけどモテそうな気がしなくて
私的イメージは「残念な男」なんですよね。
合コンでも「命捨てます」ってやっちゃうような人(里中さん談)なんですもん。
バレンタインにも美鈴ちゃん以外からチョコ貰ってそうな感じがしない。
つーか、チョコ持ってる瀬文さんが想像できない。
実は大量のチョコ貰ってたんだろうか??
謎説きと言いながら、今回は事件の謎についは進展してません。(-_-;)
それでも、志村さんのことについては一応、解決したのかな?
志村さん、いくら「へたれ」だつったって、一応SITの隊員なんだし、
守ってくれるだろうし、優しそうだし、背も高いし、結構いい男だし、
幸せになれそうですけど、物足りないだろうな、当麻にはね。
志村さんが可愛そう。当麻、酷い女だなぁ。(笑)
では、また。
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